「鯛焼きひとつ、鯛抜きで」

クリープハイプとPublic Relationsが好きな、webライターの雑記

縮んだバネ

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ゆめゆめ願うな

言葉を紡ぐことが好きだ。

それで人を笑顔にしたい、など殊勝なことは言わないが、言葉を紡ぐことを生業にしたいのはほんと。

ただ、私は凡才だ。21年ずっと自分を見ていたからわかる。卓越したワードセンスもないし、言葉を精錬してきた訳でもない。端的にいえば、天賦の才があるわけでもないのに、努力も足りない。

そりゃこんな人間とりたくねえわな。やばい。解決してしまった。順当という結論に至ってしまった。おいおい冗談だろ。ブログぐらい、熱い自己弁護でヒィヒィ言いてえよ。

 

それにしても、自分の将来の夢はどのように移り変わってきたのだろう、と振り返ると、なかなか面白い。

小学校低学年まで、私は寿司屋になりたかった。理由は、祖母が無頼の寿司好きだったから。基本的に親よりも祖母に面倒を見てもらっていた私は、生粋のおばあちゃん子。だからこそ、私にとって祖母を喜ばせることが至上命題(この言葉って誤用らしいですね、でもこれが一番しっくりくるので使います)だった。

その夢が、魚類学者を経由して警察官に変わる。青が好きだった私は青いものを見るのももちろん大好きで、海の写真やイラストを見ているうちに魚に興味を持った(寿司屋になりたかったからより注目していたのだろうか)ため、魚類学者になろうとしたヨシモト少年だったが、母から「魚類学者は理系だから算数頑張らないとね?」と言われ秒で諦めた。

思えば、寿司屋を諦めたのも母がきっかけだった。「本気で寿司屋やりたいなら中卒で弟子入りしないとじゃない?」と言われ、いや流石にもうちょい勉強したいっすわ、と選択肢から外れていった感じ。

ああ、警察官を志したのは、ミーハーだったからだ。ドラマが好きだったヨシモト。そして『龍が如く』やら『家庭教師ヒットマンREBORN!』が好きだったヨシモトは、いっちょまえに正義とは何か……などと考え、「正義」に直接関われるのは警察だ!などと思っていたのだ。あら可愛い。

そんな夢も、中学の頃には弁護士に変わっていた。理由は簡単、逆転裁判にどハマりしたのがちょうどこの頃。いやいやいや、なんて可愛いんだヨシモトは。影響されやす過ぎる。実際、冤罪の人を助けたいな、と黒川拓のようなことを願っていたので、私は実質坂口健太郎ということになる。

だが、人生で唯一嫌いになった人間が法曹界を目指していると知った私は、絶対に進路が被らないようにしたい、と弁護士を諦めた。

そこから原点回帰。高校生の頃から私は、かつてお世話になった祖母のために寿司屋を志したように、好きなものに恩を返したいと考えるようになり、低迷するテレビやラジオの復権に寄与したいと考えて行動していた。これが大学3年まで。おお、長い。

 

それが今やこれである。ワークライフバランスの観点から、テレビ局やラジオ局はスルッとフェードアウトした。というか、働くイメージができなかった。そこから、自分の好きなものは何かもう一度考え直して、あ、自分は言葉が好きだ……となって今に至る。

 

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惨月期

思えば、人生において、初志貫徹したことがないかもしれない。だからこそ、結果にも結びついてこなかった。変わらない一つの目標に向けてひた走る、といったことができないがゆえに、ストイックになれないのだ。中学も第一志望に落ちたし、大学も第一志望に落ちた。これだって、ストイックになりきれていなかった、自分の甘えである。

 

周囲の人間が、自分を買いかぶるのが辛い。

りっきーはすごいよね、りっきーはがんばってる。

そんなことはないのだ。私は努力なんてしてこなかったし、かといって才能もなく、こうしてぷすぷすとくすぶりながら己の不運を嘆いてお茶を濁すのだ。

しかし、中高は自分以外が化け物、という環境だったからこそ、劣等感もありながら「とはいえこの化け物たちと同じ環境に身を置けているのだ」と自惚れた。環境があるうえでどう努力するかが大事なのに、そこに(おそらく意図的に)目を向けなかった。

私は落ちるところまで落ちた。就活期間の惨状がこれを物語っている。3月、4月、5月と確実に私は一歩ずつ沈み込んでいった。

しかし沼底で足掻こうとすると、なけなしのプライドが足を引っ張るのだ。臆病な自尊心と尊大な羞恥心は、拭おうと思えば拭えるはずなのに、それを絶対的なものと位置づけることで、常に言い訳の余地をつくっている。

そんな自分を殺したくて、爪を真っ赤に塗った。今までしたかったけど、できなかったこと。

でも、初めて自分で塗ったネイルは、薬指以外ガタガタになった。

ただ薬指だけが、こぎれいにつやつやしている。

自分らしいな、と思った。